腫瘍科|大阪府箕面市の【山本動物病院】犬・猫の腫瘍・リンパ腫・腫瘍科認定医

〒562-0043
大阪府箕面市桜井1丁目22-24
ドルチェ桜井1F

072-725-1818

診療時間
9:00~12:00
16:00~18:30

休診日:水曜・祝日

※「午前診/午後診/変則日」などにつき
必ず『診察カレンダー』の方をご参照ください。

腫瘍科Cancer

腫瘍科

がんを治療する目的とは

箕面市桜井・山本動物病院

近年、ペットは家族の一員として愛情の中で育てられていることにより寿命も延びてきています。そこで、新たに増加してきている病気の一つが「がん」です。

 「がん」と聞くと目の前が真っ暗になり“もう終わりなんだ”という絶望感に襲われるのは人医の世界でも同様の事です。でも、ここであきらめないでください!医学の進歩とともに獣医腫瘍学もここ数年で急速に進歩してきています。そして今なお世界中の腫瘍専門医達により更なる試みがなされています。

 “とりあえず取ってみましょう”と安易にメスを入れる時代は終わり、腫瘍の種類と進行度をしっかり診断したのち、治療目的を明らかにした上で治療法を飼い主さんと共に選択してゆきます。この時、大切なことは飼い主さんに少しの疑問もあってはいけない、ということです。そのため御理解していただくまで、獣医腫瘍科認定医とじっくりと話し合うことが大切です。

 当院での治療は、きちんとした診断をつけることから始まります。がんの診断をつけるには、血球検査、生化学検査、胸部・腹部レントゲンや超音波検査等による全身状態の評価と細胞診または病理組織検査が必要です。これらの検査は治療のプランには必要不可欠なものとなります。また、最近ではリンパ腫や肥満細胞腫などでは遺伝子検査に基づいた治療が行われるようになりました。これらのデータを元に「TNM分類、ステージ分類」し治療プランを立てます。

がん治療の三つの目的

  • 根治治療
     外科切除や化学療法などによって根治を目指す治療
  • 緩和治療
     根治の確率は低くても、より良い生活を長く過ごすための治療
  • 対症治療
     将来やってくる痛みや苦しみを考え、現在の「Quality of Life」を維持することを目指す治療

その子にとって最善の治療とは、持っている病気の病期(ステージ)によって異なります。 例えば、複数の肺転移があって状態の悪い動物に大きな手術を行うようなことは致しません。 抗がん剤を使う場合も動物の状態とご家族の意思を尊重しながら、副作用の出ない量から始めていきます。

  積極的ながん治療を行うか否かの判断は、ご家族が決めることになりますから、 一番大切なのは病気に向かう家族の気持ちだと考えています。がん治療にはたった一つの正解はありません。その子にとって最善の治療はいつも違います。動物にとって何ができるのかを一緒に話し合い、考えながら治療を進めます。動物の治癒力をご家族と獣医師、みんなの力で支えてあげるのが治療だと考えています。

なお、がんの診断と治療には時間がかかりますので、できれば事前にご連絡をください。必要に応じて予約診療とさせていただくことがあります。また、ご家族の意見をきちんとお聞きしたいため、みなさんで来院することをお勧めします。

緩和ケアについて

 病気による痛みや不快感などを軽くしたり、取り除くケアのことを 『緩和ケア Palliative Care(パリエイティブケア)』と呼び、最近、注目されています。 当院では、依然から病気のペットが持つ 『痛み』を軽減させるという点に強く注目しています。激しい痛みを和らげる、呼吸の苦しみを和らげる、治療による副作用を和らげる、激しい痒みを和らげる、などがあり、ペットの飼い主さん・家族の不安を和らげるためのカウンセリングもこれに含まれます。 従来は、終末治療の中での位置付けでしたが、当院では早期から適切にをモットーに、日常の診療の中に早くから取り入れております。

リンパ腫についての一般的な知識

リンパ腫とは?

リンパ腫は、リンパ系の組織から発生する腫瘍(いわゆる“がん”)です。リンパ系組織とは、免疫システムを構成するもので、リンパ節、胸腺(きょうせん)、脾臓(ひぞう)、扁桃腺(へんとうせん)等の組織・臓器と、リンパ節をつなぐリンパ管、そしてその中を流れるリンパ液からなります。リンパ系組織を構成する主な細胞は、リンパ球と呼ばれる白血球です。リンパ液の中には液体成分とリンパ球が流れていて、やがて血液と合流します。リンパ系組織は全身に分布しているため、リンパ腫は全身で発生する可能性があります。

リンパ腫の症状

多中心型では全身のリンパ節が腫れ、しだいに元気が消失し、食欲不振になり無治療だと4~6週で死に至ります。消化器型は胃腸や肝臓など内臓器にがん細胞が広がり、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢などが見られることがあります。

リンパ腫の診断

リンパ腫の診断に用いられる検査には、以下のようなものがあります。

  • 血液検査
  • リンパ節生検
  • 胸部レントゲン検査
  • エコー検査
  • 骨髄穿刺検査
  • 腰椎穿刺検査(中枢神経浸潤が疑われるとき)
  • 消化管内視鏡検査
リンパ節生検

大きくなっているリンパ節を採取します。採取された組織は、病理医が顕微鏡で病理診断を行います。

また組織の一部は、診断に重要な免疫化学染色や遺伝子検査にも使われることがあります。遺伝子検査といっても、親から子へ遺伝する病気の有無について調べるものではなく、がん細胞のタイプを調べるものです。診断ばかりでなく、治療の手がかりとしても非常に重要です。これらの検査によって、リンパ腫の病型(タイプ)が決定される重要な検査です。

病気の広がりをみる検査

リンパ腫に対する最適な治療を選択するために、病気が体のどこに、どれくらい広がっているかを知ることが大変重要です。病気の状態が進んでいるかどうかは、予後に大きく影響します。このため、以下のような検査が重要になります。

リンパ腫の勢いや逆に治療効果を調べる検査

血液検査で乳酸脱水素酵素(LDH)、C反応性蛋白(CRP)、チミジンキナーゼ活性などを測ります。

リンパ腫の標準治療

リンパ腫の治療法には次のようなものがあります。。

  • 放射線療法
  • 化学療法(抗がん剤)
  • 経過観察(Watchful Waiting、注意深い観察)
放射線療法

放射線療法は、高エネルギーのX線を病気のある部位に照射して、腫瘍に対する殺細胞効果を期待する治療です。照射した部位に対してのみ効果が期待できます。主に、鼻腔内など局所で発生したリンパ腫に対して行われます。

化学療法

抗がん剤を経口(内服薬)、あるいは静脈内投与することによって、腫瘍の殺細胞効果・増殖抑制効果を期待する治療です。腫瘍があることがわかっている場所に効果があるばかりでなく、診察や画像診断ではわからない微小な病変部位に対しても効果が期待できます。低分化型リンパ腫ではUW-25やUW-19などの抗がん剤プロトコールが、そして高分化型リンパ腫ではクロラムブシルなどがよく使われます。

経過観察
(Watchful Waiting、注意深い観察)

ゆっくり進行型のリンパ腫(高分化型リンパ腫)の場合、全く無症状で何年も経過することがあります。化学療法を行うメリットがないと判断される場合には定期的に診察を続け、何か症状が出たときにはじめて治療を行うという選択です。物足りなく感じる患者さんもいるかもしれませんが、ヒポクラテスの格言、“First, do not harm!(まず第一に害を与えないこと)”の実践ともいえます。

 治療は、まず完全寛解という状態を目指します。完全寛解とは、治療前に腫(は)れていたリンパ節や、レントゲンやエコーなどで指摘されていた病変が小さくなって消失するか、あるいは正常の大きさになり、発病前と同じ状態になることを指します。完全寛解が得られた後に予定どおりの治療を行って、治療終了後、定期的に経過をみていきます。

治療抵抗性、そして再発

一般的に治療抵抗性とは、一度も寛解を得られない状態を指します。

 再発とは、いったん縮小したリンパ節が再び大きくなってきた状態をいいます。いったん良くなったリンパ腫が再発したときの心痛は、非常に大きいものです。しかしながら再発の場合、一度は寛解を得られたわけですから、再寛解を目指してレスキュー療法を行います。

肥満細胞腫とは

箕面市桜井・山本動物病院

肥満細胞腫はイヌの皮膚にしばしば発生する悪性腫瘍であり、発生年齢のピークは7~9歳と報告されています。皮膚以外では、消化管や脾臓などに発生する場もあります。また肥満細胞腫は転移や再発率が非常に高く、マージンが十分確保された場合でも高率に再発・転移が認められます。まれに多発性に発生することも報告されています。

グレード

イヌの肥満細胞腫は、腫瘍細胞の顆粒含量、細胞異型性、浸潤性などにより、グレードⅠ(高分化型;低悪性)からグレードⅢ(低分化型;高悪性)の3段階に分類されます。グレードと1500日の生存率は、グレードⅠ~Ⅲでそれぞれ、82%、44%、6%と報告されていますが、後躯や爪床、生殖器に発生した肥満細胞腫の予後は一般的に悪いケースが多いことが知られています。

最も一般的でまた長年使用されているグレード法は、1984年にPatnaikらによって提唱された方法です。
組織学的にこのグレードを決める際の主な基準は、以下のようになっています。

Grade組織学的特徴1500日以上
の生存期間
(毛包間)真皮に限局。よく分化し、比較的豊富な細胞質内顆粒を持った肥満細胞
腫瘍による壊死や水腫は最小限
93%
真皮深層まで、皮下組織に広がることもある
分化度がやや低い腫瘍細胞で、細胞質内顆粒は様々、核分裂像は0-2/高倍率1視野 比較的広範な壊死や水腫、間質の変性
44%
皮下組織まで深く、広く浸潤する
分化度の低い腫瘍細胞で、細胞質内顆粒は見づらく頻繁な核分裂像(3-6/高倍率1視野)、著しい核異型も示す
広範な壊死や水腫、間質の変性
6%

このグレード法は基本的に真皮から発生した腫瘍の範囲を基準に含んでいるため、皮下組織のみに発生した肥満細胞腫には用いることができません。

近年、Kiupelらによって細胞形態と予後判定を基にして分類が再評価され、新しいグレード法が提唱されました。この分類は低グレード、高グレードの2段階で表記されます。以下に示す特徴のうち1つでも当てはまると、この分類で高グレードと評価されます。

  • ≧7個/高倍率10視野の核分裂像

  • ≧3個/高倍率10視野の多核(核が3個以上)細胞

  • ≧3個/高倍率10視野の奇怪な(bizarre)核

  • ≧10%の巨核細胞

この分類法によると、高グレードの肥満細胞腫では他の部位での発生かつ/又は転移までの期間は著しく短く、また生存期間も短いと報告されています。

  • 低グレード:生存期間中央値 2年以上

  • 高グレード:生存期間中央値 4カ月以下

予後・治療法

全ての犬の皮膚肥満細胞腫は、潜在悪性と考えるべき腫瘍です。この腫瘍は組織学的なグレードによってその予後が違い、これは上述のとおりです。 グレードの他に予後が悪いとされている要因には、

  • 会陰部、陰嚢、包皮、指、粘膜皮膚境界部、鼻鏡に発生した場合

  • 発見時に臨床症状を呈していた場合

  • 腫瘍の大きさが3cm以上であった場合

c-kit遺伝子検査な陽性であれば、分子標的薬であるイマチニブやトセラニブが有効ですので病理組織検査と同時に遺伝子検査を実施します。

 治療は外科的切除が第一選択となります。手術は完全切除を心がけることが重要です。そのためには、十分なマージンを確保することが必要であり、腫瘍から1cmのマージンでは25%が不完全切除となり、2cmで100%の完全切除になると言われています。最低でも2cmのマージン確保(できれば3cm)と深部方向では筋膜1枚はがすのが勧められます。

大きな腫瘍であったり、多発性であった場合には、術後に化学療法(抗がん剤治療)が必要になることがありますので、病理組織検査と同時に、c-kit遺伝子検査を行うとよいでしょう。

 c-kit遺伝子検査が陽性であれば、分子標的薬であるグリベックが肥満細胞腫の犬に対してほぼ100%効果があると言われています。
手術後の病理組織検査から、Patnaik分類およびKiupel分類をおこなうとともにマージン評価、脈管浸潤、リンパ管浸潤およびリンパ節転移を評価し、総合的判断ののちに術後抗ガン剤の実施の有無を検討します。

以下の場合には術後抗がん剤を勧めています。

  • Kiupel分類で高グレード
  • マージン(切除縁)に腫瘍細胞がある
  • 脈管浸潤がある
  • リンパ節転移がある
  • 発生部位が口唇である

抗がん剤

肥満細胞腫に対して適用される抗がん剤

  • ビンブラスチン+プレドニゾロン
  • CCNU+プレドニゾロン
  • イマチニブ単独
  • トセラニブ単独
  • ビンブラスチン+トセラニブ

犬の乳腺腫瘍

 犬の乳腺は、左右対称に5~7対あります。ちょうど真ん中の3~4番目の乳腺には、頭側としっぽ側からそれぞれリンパ管や血管が入り込んできています。このことは外科手術をどこまでするか決定する際非常に重要となってきます。この乳腺にできる腫瘍は、乳頭の周囲に硬めのしこりが触れるのが特徴です。(前脚と後脚の付根には左右にリンパ節があります。)

発生率

メスの全腫瘍中 52 % ( 人の3倍 )

組織所見・・・良性: 50 % 悪性: 50 %

乳腺腫瘍の原因は詳しくは分かっていませんが、未避妊犬では前癌状態の乳房障害の発生率が9倍に上昇するという報告もあり、エストロジェンやプロジェストロンなどの女性ホルモンが関係していると言われています。一部では遺伝の影響も考えられています。

また腫瘍の発生因子として避妊時期によっても発生率は違ってきます。

避妊時期発生率
初回発情前0.5%
初回~2回目発情の間8.0%
2回目発情以降26.0%

 乳腺腫瘍は外科的に切除する方法がベストです。下の表から分かるように、一般的に乳腺腫瘍は約半数が悪性と言われており、早期の切除が根治につながると考えられています。

乳腺腫瘍の手術

部分切除

検査が主な目的で一部だけ切除します。

・メリット
手術時間が短く、傷が小さくてすむ。入院 0 ~ 1 日程度。

・デメリット
病理組織検査で悪性の場合、再度大きく取り直す必要がある。乳腺自体は残るので、再発が多い。

第1~3乳腺摘出術、第3~5乳腺摘出術、または片側乳腺摘出術

・メリット
リンパ管の流れを考慮した切除方法。乳腺自体をはずすので,手術部位での再発率は低い。

・デメリット
手術時間、経費がかかる (1 ~ 1.5 時間 )。入院が必要(2 ~ 4 日程度)。

術後の定期検診

手術により完全にしこりがとれ、傷がきれいに治ったらひとまず安心です。しかし、外科的にきれいに取り除けたように見えても、顕微鏡のレベルでは乳腺の細胞が残っているかもしれません。つまり再発の危険性は残されていますので、定期的な検診で早期発見に努めましょう。

術後の病理診断

術後の病理組織検査で次のような所見があった場合にはさらなる治療が必要です。

  • 切除縁(マージン)に腫瘍細胞があった場合
  • リンパ管内浸潤もしくはリンパ節転移があった
  • 脈管内浸潤があった場合
1.切除縁(マージン)に腫瘍細胞があった場合
2.リンパ管内浸潤もしくはリンパ節転移があった場合
3.脈管内浸潤があった場合

猫の乳腺腫瘍

箕面市桜井・山本動物病院

猫には乳腺が通常左右4対あります。乳腺にはリンパ管や血管が入り込んでおり、頭側の2つの乳腺は腋窩リンパ節から胸骨リンパ節に流入しています。尾側の2つの乳腺は鼠径リンパ節に流入しています。この乳腺にできる腫瘍は、犬ほど頻繁に見られるものではありませんが、犬と同様、乳頭の周囲に固めのしこりが触れるのが特徴です。 症例によっては、腫瘍が自壊し、乳頭が発赤、腫脹し、褐色や黄色の滲出液が見られることも多々あります。またリンパ節をはじめ、肺、肝臓、腎臓などに転移します。

特徴

  • メスの全腫瘍中 17 %を占める
  • 組織所見 80 % 以上が悪性
  • 侵襲的な挙動を示し、また早期に転移しやすい
  • 外科療法単独では再発、転移が頻繁に認められる

原因

猫も犬ほどではないにせよ、エストロゲンやプロゲステロン等、女性ホルモンと多少なりとも関係していると言われています。実際、未避妊の猫の腫瘍発生率は、早期に避妊手術を行った猫の7倍にもなります。

治療方針

乳腺腫瘍の80%以上は悪性であるため、始めより乳癌として治療を進めていくことがほとんどです。

● 細胞診

ただし、乳腺腫瘍ではなく他の悪性腫瘍である可能性を除外するために細胞診が必要です。

● 手術の選択

遠隔転移のないステージⅡ~Ⅲの猫の患者群において、手術した群と手術しなかった群を比較すると、

手術群の方が生存期間が長い

ことが示されています。
そのため延命効果と治癒の見込みから、遠隔転移のない全ての例で手術を勧めています。
これはステージⅠ、乳腺腫瘍の大きさが1cm未満の猫でも同じです。

● 部分切除か全摘出か

猫では、片側ないし両側乳腺全切除の方が、部分切除よりも再発率が低いことが報告されています。

腫瘍部分のみの切除が適応されることもある犬と異なり、大部分の猫では片側または両側の乳房全摘出手術(4つの乳腺全ての切除)が局所再発の可能性を低くすることに繋がります。

腫瘍が両側にある場合は段階的に間隔をおいて両側乳房全摘出術が行われます。同時に腋窩リンパ節や鼠径リンパ節も同時に切除します。リンパ節切除により、正確な病期判定および転移巣切除による予後改善の可能性があげられます。

片側乳腺全切除では入院はおおよそ3~4日となります。

● 化学療法

現在、証拠となるデータの比較がされていませんが、外科手術後に補助的化学療法を行うことにより、予後を改善できる可能性が示唆されています。 ドキソルビシン、ミトキサントロン、カルボプラチンなどの抗がん剤が有用であると期待されています。

● 生存期間法

生存期間(予後)は臨床ステージによって変わってきます。

離床ステージは

  • 原発腫瘍の評価
  • 領域リンパ節の評価
  • 遠隔転移部位の確認

の3つによって決定されます。

臨床ステージ生存期間中央値
ステージⅠ29ヶ月
ステージⅡ12.5ヶ月
ステージⅢ9ヶ月
ステージⅣ1ヶ月

血管肉腫

血管肉腫は血管を構成する内皮細胞由来の悪性腫瘍です。
心臓や後腹膜など様々な部位で発生しますが、脾臓での発生率が最も高いとされています。

予後

孤在性のこともありますが、脾臓内に多発することもしばしばで、その場合には右心耳などからの転移も考える必要があります。犬では最もよくある脾臓腫瘍で、6-17歳の間で発生します。 脾臓の血管肉腫は高い転移率を有し、予後はよくありません。

転移は血行性に起こり、肝臓や肺、脳にもっとも起こりやすく、腹腔内出血がある場合には大網/腸間膜に播種します。脾臓に発生した血管肉腫の生存期間中央値は、摘出手術のみの場合19―86日と報告されています。また手術とドキソルビシンによる術後補助化学療法を併用した場合の生存期間中央値は257日(ステージⅠ)、210日(ステージⅡ)、107日(ステージⅢ)であったと報告されています。 近年ではメトロノミック化学療法により経口投与を中心とした治療も行われています。

細長い脾臓の右端に大きな血管肉腫ができています

大きくなると破裂する危険性が高まります

生存期間

当院では術後メトロノミック化学療法を実施しており、300日前後の生存期間が得られる症例もいくつか経験しています。

論文 (PDF)

犬の脾臓血管肉腫におけるエトポシド,クロラムブシルおよびNSAIDs を用いたメトロノミック化学療法の治験例
Chemotherapy Trial Using Etoposide, Chlorambucil, and NSAIDs for Dogs with Splenic A Hemangiosarcoma Mitsuya YAMAMOTO

動物の疼痛管理 ~痛みのないくらしのために~

がんは動物にとってどれほど痛いのか?

全ての種類の腫瘍が痛いわけではありませんが、少なく見積もっても犬、猫の腫瘍の30%以上にはかなりの疼痛があると考えられています。人においては進行がんや末期がんの患者の90%までが疼痛を感じています。ただし末期の状態だけに疼痛が出現するものではないので、診断時から疼痛の管理が必要のこともあります。
部位としては、特に口腔内、骨、泌尿生殖器、眼、鼻、神経系、消化管、そして皮膚の腫瘍に最も多く疼痛が認められます。
加えて、疼痛は腫瘍自体によって生じるだけでなく、化学療法や放射線療法、外科療法によって全身衰弱に関係して、がんに関係なく慢性痛や変形性脊椎症などでも生じます。
疼痛は患者にストレスを与えます。持続するストレスは治癒率を低下させるだけでなく、呼吸や循環器、消化器機能に悪影響を及ぼします。そのため、疼痛を軽減することが犬や猫の生活の質を向上させるために重要となります。

がん性疼痛のサイン

犬も猫も本能的に病気や疼痛を隠そうとするため、飼い主にとっても分かり辛いものです。がんを患っている犬や猫の疼痛を評価するには挙動の変化に注意することが重要になります。 そのため、活動性や食欲、グルーミングや排泄など様々なことに対する注意が必要になります。 次頁に行動の変化の例を一部挙げます。


活動性:普段より動きたがらない。特殊な行動の変化(ジャンプ、遊ぶ、外出、
    散歩等の減少)グルーミングの減少
食欲 :慢性疼痛によりしばしば減少
態度 :攻撃性、鈍さ、驚きやすさ、依存性の高まり、寄り添ってくる等
表情 :猫では頭を低くして横目で見る。犬では悲しい表情で頭を下げる
呼吸 :激しい疼痛により早くなる
排泄 :猫ではトイレを使用しなくなる。
    犬では不適切な場所での排泄。
等々

おわりに

がん疼痛の治療は、動物の病態を悪化させることなく、痛みを最大限に取り除き、しかも副作用を最小限にすることです。痛みは治療すべき症状であり、治療しうる症状です。痛みが除去されると、たとえ末期であっても表情は明るくなり、穏やかな生活が送れることになります。

 ヒトの研究ですが、マサチューセッツ総合病院、およびハーバード大学医学部の進行性肺癌患者に対する研究で、早期緩和ケアを行なったほうが生存期間延長、およびQOL(生活の質)の改善が見られたと報告があります。治療困難とされる病気を有する患者にとっては注目に値する結果です。動物たちにも同じことがいえるのではないでしょうか。

 家族の一員である動物たちが、穏やかな最後を迎えるために、適切ながん性疼痛の管理が必要であると考えています。

 その他気になる点、お聞きになりたいことがございましたら、お気軽に獣医師にお尋ね下さい。

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